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 いつものおずおずとした雅志とちがって、少し甘えた語調だった。 「なあに、見せたいものって?」  知子は雅志の微妙な変化に気づきながら、今日のドッジボールの一件を思った。きびしいようでも特訓したことが、雅志にはよかったのだと思った。 「これ」  うしろ手にかくし持っていた写真を、雅志は知子の前に突き出した。 「あらあら、これは運動会のときの写真じゃないの」  雅志がころび、それを傍に立って知子が見ている写真だった。われながらやさしい表情に写っていると知子は眺めた。  写真はもう一枚あった。雅志が片膝《かたひざ》を立てて、起きあがろうとしているところだ。それを知子が、両手を胸に組んで、祈るようにじっと見つめている。 「まあ! この写真、どなたが撮ったの」 「あのね、『月刊石幌』の、お兄ちゃんだよ」 「『月刊石幌』? まあ、とんだところを写されたわね、雅志くん。でも、あのときの雅志くん、ほんとに偉かったなあ。先生はね、ころんでも、ビリでも、走りつづけた雅志くんが好きなのよ」  歩き出しながら、知子はいった。アカシアの花の香りが、甘酸っぱく漂っている。 「うん。この写真を撮ってくれたお兄ちゃんも、そういってた」 「まあ、先生と同じね。みんなもきっとそう思ったわよ」 「そうかなあ」 「そうよ。できてもできなくても、一生懸命するってことは、立派なことなのよ。あのときの雅志くんは好きだけど、ドッジボールで逃げまわるだけの雅志君は、ほんとうは先生はきらい」 「…………」 「自分さえ助かればなんて、そんなの卑怯よ。男らしくないもの。打たれたっていいじゃない。何よボールぐらい。ね、そうでしょ、雅志君」
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