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「言うことを聞け……それ、一体どういうことなの? 何を要求しているの?」 「それは、ま、おまえが心配することではない!」  虎三はそこまでくると、またあの頑固さを鎧《よろ》って、答えないのである。  父はなぜ沈黙するのだろう。夏希は窓辺に射す明るい光の中に、春の闇を感じた。  この手紙のことだけではない。強盗に襲われて刺されたことさえ、警察にも届けてはいないというではないか。 「ねえ、お父さん。心配しているのは私のほうなのよ。薄気味わるくって仕方がないわ。今にもっと悪いことが起きたら、どうするのよ。何か隠していることがあるのなら、正直に話して——」  その時、お話があります、と蓮見康子が眼顔で合図した。夏希は病室の外に出た。 「私、知りませんでした。お嬢さんのほうにも、あんな大変なことがあったなんて——」  廊下に出ると、康子はすぐに話しかけてきた。あんな大変なこと、というのは、写真のことや、旅行先で脅迫されたことであろうか。  二人は病院の前の「ソフィア」という喫茶店に入った。 「別に、私のほうはたいしたことではないんだから」あんまり心配しないで、と夏希は釘をさした。「話って、なあに?」  康子が言いにくそうにしたあと、「私、ずい分考えたんですけど、お嬢さんなり、私の立場から、事件のこと警察に届けておいたほうがいいんじゃないかと思うんですけど」 「つまり、父には内緒でそれとなく警察に?」 「ええ。お父さんに言うと、頭から反対なさるに違いありませんから」  夏希は、康子の思慮深い意見に、さすがに女の年輪というものを感じた。 「康子さんはどうして、そう思うの?」 「いつかも話しましたように、お父さんを襲って刺した男は、ただの強盗じゃなかったんじゃないかと思うんです」 「それは聞いたわ。で?」
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