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mokuba 片側フリルリボン編集

 小野寺は説明した。  船山慎平が会社整理にあたり、自己の資産にかかわる成城の家や別荘など数億円の財産を禿鷹どもにむしられないため、妻と離婚し、慰謝料という形で妻にあげてしまえば、債権者や取立屋はそれを取ることができない。つまり、船山は再起のための軍資金を、愛する妻、亜希子に預けたのではないかと——。  亜希子には最初、意味がよくわからなかった。  が、離婚直前の慎平の挙動や、取立屋の執拗な質問などを考えあわせると、小野寺の説明がにわかに現実味を帯び、正しいことのような気がしてきた。  そしてその瞬間、亜希子はぎょっとなった。  とすれば……慎平は今でも本心では私を愛しているのかもしれないではないか!  愛しているからこそ、私を路頭に迷わせまいとした。そして数億円の財産を私に預けようとしたのだろうか。  それは、今まで亜希子がまったく考えもしなかった地平であった。しかし、もしそれが真実だとするなら、慎平は身勝手すぎる、という腹立ちめいた思いが、次にやってきた。 「それならそれで、最初から私に相談してくれればよかったのに」 「いいや。それは違うんだよ、亜希子さん。あらかじめ夫が妻に相談したり、説明したりすれば、共同謀議となって、その偽装離婚は詐害行為とみなされる。妻はあくまで、何も知らないままでいないと——」  なるほど、私は何も知らなかったからこそ、あの取立屋の厳しい査問にもがんとして、もちこたえたわけだ。  が、別の角度から考えれば、亜希子は防波堤にされたことになる。わら人形になったことになる。そう考えると、慎平のやり方は、ますますひどい仕打ちだ、と亜希子には思えてもくるのだった。  亜希子の頭は混乱した。 「それに、その義弟というのも、ちょっと、ひっかかるな。たとえばね、船山氏はあなたとの離婚を考えていた。だが、夫からの一方的な離婚宣告では、民法上、通用しない。そこで、弟をけしかけてあなたと肉体関係をもたせる。それで立派に離婚は成立する」  あッ、と亜希子は思わず、悲鳴をあげそうになった。  男というものはずいぶん、色々な角度から物事を考えるものだという、小野寺の意見に対する率直な驚きでもあったし、そしてそれ以上に、直彦が浴室で挑んできたことまでが慎平のさしがねだったとすると、これはますます許せない、という思いであった。  そうだ。これは一度、しっかり直彦に確かめなければならない——。  亜希子が混乱した頭の収拾をつけかねている時、
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