miumiu 財布 アンティコ
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null しかし、なんであったかがすぐわかった。黄《おう》燐《りん》のマッチを点火したときの、あの臭いがしたのである。「猫いらず」である。  糖《とう》蜜《みつ》、澱《でん》粉《ぷん》、着色料などに猛毒である黄燐八%を混和し、ネズミ退治用にチューブ入りで、その昔市販されていたのである。  老女は家族とのいざこざから、疎外されての自殺であった。二、三日前にチューブ入りの猫いらずをパンにぬり、食べたらしい。その後家族も本人を見ていないので、はっきりした状況はつかめないが、彼女は布団に入り死を待っていたようであった。  昔、一般家庭にある毒といえば猫いらずであったから、これによる自殺は多かった。また毒殺もあったが、食べているうちに気付かれ、失敗に終っている。  その後、黄燐に代わる新しい殺《さつ》鼠《そ》剤《ざい》がつくられ、あるいは殺虫剤、農薬、青酸、睡眠剤、都市ガスなど身の周りに毒薬物は氾《はん》濫《らん》するようになって、自殺手段などに猫いらずを使うことはなくなってしまった。  一方、殺菌消毒剤として使われていたのがクレゾール石けん液である。職務上これを扱う看護婦の自殺によく使われた。致死量は一〇〇〜一五〇といわれ、これを飲むと嘔《おう》吐《と》、腹痛、下痢、消化器系のびらんが生じ、長い時間苦しむことになる。そのため途中で意に反し「助けて」という言葉を発することがある。また口から流れ出るよだれは、クレゾールを含んでいるので、皮膚を腐《ふ》蝕《しよく》し淡褐色に変色することもある。  クレゾール石けん液は独特の臭いがあり、飲みにくいので、猫いらずと同様他殺に使われることはきわめて稀《まれ》である。      姉が妹にクレゾールを注射して殺害